昨日、表題のTV番組が放送されていました。
「幼い子供が、親からお願いされた初めてのおつかいに挑戦する様子をドキュメンタリータッチで描く」
「年齢は3歳~6歳が多いが、稀に1歳や2歳の子が出演した事もある」
「おつかいの中で様々に発生するトラブルなどを通して、子供の自立を応援するだけに留まらず、親子関係のあり方や育児・教育のあり方などを視聴者に改めて考える機会も提供する」
(ウィキペディアより)
この番組には、賛否両論があります。
でも、30年以上続く長寿番組なので「賛」の意見が強いのでしょう。
「否」の意見として「児童虐待だ」というものがあります。
私は、被虐待児童だけで構成される特別支援学級を担任したことがあります。
この機会に、この番組について書き留めておくことにします。
●それは、スモールステップなのか
「スモールステップ」は教育者が常に念頭に置くべき原則です。
難しい課題は、細分化することで達成させるのです。
その結果、児童は成功体験を積むことができるのです。
いきなり難しすぎる課題に取り組ませて失敗すると。
児童はやる気を失ったり、トラウマを抱えたりすることがあります。
「はじめてのおつかい」の場合、こんなステップが考えられます。
保護者と一緒にその店まで歩いたことがある
保護者と一緒に目的の商品を買ったことがある
保護者と一緒に店員さんと会話したことがある
保護者と一緒にレジで会計をしたことがある
保護者と一緒に重い荷物を持って歩いたことがある 等、等、等。
こうしたステップをきちんと踏まえていれば。
その児童が一人でおつかいができる程度の発達段階に達していれば。
帰り道で泣くとか、店で立ち往生するとかいうことは起きないでしょう。
でも、民放のTV番組としては、それでは面白くないわけです。
視聴者をハラハラさせて、最後に感動させたり泣かせたりしたいわけです。
この番組は、年間で約100人の子どものおつかいを撮影しているそうです。
実際に放送されるのは、その10分の1ほどだそうです。
スムーズに進みすぎたら、放送されないでしょう。
失敗に終わっても、やっぱり放送されないでしょう。
視聴者は、面白い?部分だけを見ているのです。

●私は読書感想文の話をしてるんだよ
読書感想文は、夏休みの宿題として悪評?が高いようです。
それは、多くの場合「課題が難しすぎる」からでしょう。
担任は、1学期の間にこういう指導をしたでしょうか。
本を何冊も読んだことがある
物語についての長い感想を書いたことがある
登場人物と自分の経験を照らし合わせて感想を書いたことがある
原稿用紙1~2枚程度の長い文章を何度も書いたことがある
(感想文コンクールは小3~小6で「1200字以内」なので3枚です)
読み手に訴える書き出しを教えられたことがある
書いた作文をホメられたことがある
友だちの作文を読んで感心したことがある 等、等、等。
こういう指導をせずに「夏休みに感想文を書きなさい」では、そりゃダメでしょう。
立ち往生する児童がいるのは、当たり前です。
それを見る保護者だって、良い気分ではないでしょう。
そういう事態を招いたのは、担任の指導なのです。
「はじめてのおつかい」と同じなのです。
教えていないから、そうなるのです。
店員さんに用件を伝えられなかったり。
帰り道で泣き出したり。
荷物の重さに耐えられなかったり。
そうならないように、スモールステップで教えておくべきなのです。
それができていないなら、やらせるべきではありません。
それは、児童虐待と言われても仕方ありません。
●どっちへ行くのですか
教える
B ↑ A
やらせない← →やらせる
D ↓ C
教えない
こんなマトリクスが考えられます。
学校教育的には、Aが最上です。
「スモールステップで教えて、やらせる」です。
最低は、Dでしょう。
「教えない。やらせない」です。
「はじめてのおつかい」や感想文の宿題は、Cになっている場合があるでしょう。
「教えていないけど、やらせる」です。
危ないです。
大人は、よく考えなくてはなりません。
近年、読書感想文を宿題から外す学校が増えていると聞きます。
難しすぎる課題を外すのは、結構なことです。
でも、それは「感想文を書けるように教えていない」
ということの裏返しでもあります。
多くの小学生にとって「原稿用紙3枚」というのは結構な分量です。
その課題を乗り越えることは、成長につながると思います。
その機会を、放棄する学校が増えているわけです。
つまり、上記のマトリクスで最悪のDを選んでいるのです。
スモールステップで教えて、原稿用紙3枚を難なく書けるようにするのが本来だと思うのです。
教育者がやるべきなのは、Aだと思うのです。
近年の「働き方改革」の中には
「そこ、削るとこじゃないでしょ」という例が散見されます。
Dは、一番ラクちんです。
クレームも少ないでしょう。
でもそれって、削るところを間違えてませんか。
削るとこをを間違えず、児童を適切に成長させていって欲しいものです。
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